【旧吹上トンネル】A君からのSOS

これは昔、大学時代に友人のA君と2人で旧旧吹上トンネルへ肝試しに行った時の話。

全国でも有名な心霊スポットとして名前が上がる旧旧吹上トンネル。

このトンネルの噂は色々と聞いていたが、実際に見てみるとやはり怖い。


周りには、なんだか分からない廃屋があったり、お目当てのトンネルはボロボロになった金網が張られて、中は真っ暗、道もキチンと舗装もされていないトンネルだった。


友人のA君は幽霊は信じるタイプではなく、臆することなく先頭に立って、ヅカヅカとトンネルの奥に進んでいった。

正直言ってビビりまくっていた俺は、かろうじてA君のおかげで進むことができた。


トンネルの半ば程まで行ったところで、A君が壁に妙なシミを見つけて立ち止まった。

そのシミはどことなく髪の長い女の姿に見える。

旧旧吹上トンネルの有名な噂は白い女の霊だ。

このシミがトンネルにまつわる数々の噂の発端なんじゃないかと勝手に解釈して少し安心した。

さらに奥に進んで探索したが、特に何もなかったのでそろそろ車に戻ろうとした。


するとA君は

「まだ奥があるから見に行ってみようよ」

そう言って俺を呼び止めた。

しかし、もう半ば飽きていた俺は

「A君さ、もう特に何もなさそうだから、車に戻ろうよ」

そうA君を説得した時だった。


突然悲鳴をあげて、A君がこっちに向かって走ってきた。

突然のことで、訳が分からなかったが、

全速力でトンネルの出口めがけて走った。


後ろは振り向きたくなかったが、A君が心配だった。

A君が無事か、一瞬だけ後ろを振り向いて確認した。

暗くて見えづらいが、A君は来ている。


一体、何から逃げているんだ?


なんとかトンネルの外に出て、急いで車まで走った。

あのトンネルでA君は何を見たのか?

聞きたかったが俺もA君も恐怖でまともな精神状態ではなかった。


帰りの車内、A君との会話は皆無だった。

A君の自宅に到着して、A君が車から降りる間際に、俺に何かを伝えたそうだったが、何も言わず俯いたまま家に入っていった。


それから数日後、俺は落ち着きを取り戻したが、A君とはなかなか大学で会わなくなった。

たまにふと学校で見かけるのだが、声をかけようとすると、まるで避けられているかのようにいなくなる。


それに、あれ以来、A君から変なメールが届くようになった。

それは暗くてよく分からない真っ暗な写真。

だが1日ごとに送られてくる1枚1枚は、角度を変えて、同じ場所で撮っている奇妙な写真だった。


これってあのトンネルの中の写真か?

A君はあの肝試しのあとから、毎日1人でトンネルに行ってこの写真を撮っているのか?

あんなところに1人で。


真相を聞こうにも、今はA君とは連絡がとれず、どこで何をしているのかもう分からない。

なぜ俺にあの写真を送ってきたのか。

今思えば、あれはAくんからのSOSだったのかもしれない。

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